口腔内スキャナーとは?CAD/CAMの歯学博士が教えるデジタル歯科医療

口腔内スキャナーは英語でIntra Oral Scannerと言いますが、頭文字を取って「IOS」と言います。

今回当院で導入したIOSは「MEDIT i700」という機種です。

「クリニックに導入するのであれば実際どのスキャナが良いの?」とよく聞かれます。

乱暴な言い方かもしれませんが、私的には正直どれでも良いです。

どれも高精度ですから。また、どのスキャナについても、昔のクローズシステムはなく、ほぼフルオープンですから、あまり考えなくても良いと思います。

大事なのは、スキャナそれぞれに付随するオプションの機能でしょう。

最近のIOSはどの機種もかなり高精度で、「精度」だけで比較した場合、正直それほど大差ないです。IOS間の精度(ちなみに精度はAccuracyといいます)を比較した論文やIOSに限らず、卓上型の模型スキャナ(ラボに置いてあるような代表的なものだとAadvaスキャナ等)とIOSの精度を比較した論文等多く発表されていますが、スキャナ間での差はほぼ無いと言って良いと思います。これについては6、7年前に私もスキャナ間での精度を検証する口演発表などもしましたが、その頃からそれほど大差無く、最近のシステマティックレビューを見るとスキャナによる精度検証はほぼ考えなくて良いレベル(どのスキャナも精度が良い)ということになっています。

(※スキャナの精度は変わりないが、やはり一番大事なのは支台歯形成であって、治療するドクターの技術によりかなり精度に差が出ることは付け加えておきます。)

厳密に言いだすとキリが無いのですが、例えば焦点深度でいうとSironaのPrimescanは超高速コントラスト解析法(パターン光投影の三角測量と共焦点法の組み合わせ)により、およそ20mmの深さまで読み取れます。ちなみにMEDIT i700の場合は三角測量方式で12~23mmの深度です。そのため、深いところを取りたい場合ではSironaに負けます。が、それで言うとコア印象くらいなので、直接法でコア築すれば良いのであまり私は気にしていません。

スキャン機能で言うと、各社様々な機能がありますが、例えばMEDIT i700の機種紹介のPDFカタログを見ると、施術前「診断モデル」スキャンができるとあります。

ただ、これは別に特質したものではなく、大分前からそのような機能はありました。というより、CADソフト上で扱える機能で、術前と術後のスキャンデータをラボへ送れば切り抜きして設計ができます。CADソフト上で十分に行えました。ダブルスキャンテクニックと言いますが、当時私はexocadというソフトで実際の臨床で使用していました。

ちなみにこれが私の研究テーマで、「CAD/CAMクラウンにおける歯冠形態再現性」の題目で学術論文をネット上であげているので、良かったら見てみてください。

全顎スキャンする場合については、誤差が生じやすいです。特に前歯部のスキャンを挟む際にスキャンデータが歪みやすいので注意が必要です。ただ、これらも「スティッチング」といって、どれ程のデータが被っていれば次のデータが入ってくるか把握していれば特に問題とならず、この%については機種により違いますが、基本的に最近のスキャナであればそれ程大差無いので気にしなくて良いと思います。

では、何故私がMEDIT i700を選択したのか。

ずばり、MEDIT LINKから無数の無料コンテンツをダウンロードできる点にあります。

アイホンと同じようなものです。アイホンで便利機能(ウェザーニュースやユーチューブ等)を追加したい場合、AppStoreから無償(厳密には0円で購入)でダウンロードしてご自身の端末で利用できると思います。

同じようなことがMEDIT i700ではできるのです。

実際に私が利用しているアプリケーションは「オルソシュミレーション」といって、矯正治療をした場合、どこまで歯を動かすことができるのか視覚化して患者様へお伝えできるアプリです。

簡易的なマウスピース矯正のシュミレーションの先駆けは、何といってもiTeroでしょう。マウスピース矯正のインビザラインは世界シェアNo.1なので、iTeroでスキャンしたデータから即座に簡易的ですが、インビザラインのオルソシュミレートをできるのは便利ですよね。とはいえ、これもあくまで簡易的なシュミレートですので、正確性には劣りますし、iTeroでなければいけない訳ではなく、例えば他にPrimescanで取得したデータ上で、シュアスマイルとうマウスピース矯正の簡易シュミレートをすることもできます。

MEDIT i700では、このようなオルソシュミレートも無料のアプリをダウンロードすればできます。今後、他の様々な可能性も考えて私はMEDITを選択しました。

私が初めてIOSを触ったのはおよそ10年前です。その頃は、今のようなビデオキャプチャー方式ではなく、一枚一枚写真を撮り、それらを重ね合わせて3Dデータを構築するというもので、スキャンを終えるまでかなり時間がかかりました。

当時と比較するととてつもない進歩がありますし、CAD/CAMの発展は目覚ましいものがあります。

私は今、臨床の場に立ち患者様のために日進月歩の身です。今後新たな技術改革、新規材料の検討等、大学で研究されている研究者たちへ期待と尊敬の念を込めて、今回はここで締めたいと思います。

今後の歯科医療の発展がとても楽しみです!

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